ミサゴの特徴や生態・鳴き声について
「空飛ぶ漁師」と呼ばれるほど魚捕りの名人であるミサゴという大型の鳥がいます。
一般的にはそれ程、耳なじみのない鳥だと思いますが、日本では古来から魚を捕るタカとして知られ、日本書記には覚賀鳥(かくがのとり)と記されています。
そんなミサゴですが、英名の方は多くの方が耳なじみあるものでしょう。
この記事では、ミサゴの特徴や生態・鳴き声について、まとめています。
この記事でどんなことが知りたいですか!?
ミサゴの名前の由来
名前の由来は諸説ありますが、いずれもミサゴの「ミ」は「水」に関係し、ミサゴの主食である魚の捕獲方法に由来していると考えられます。
水サグル、水捜(ミゾサガシ)などが語源になっていると言われています。
関西ではミサゴが魚を捕る時に立てる水音「ビシャン」が訛ってビシャゴ、ミサゴになったとも言われ、ミサゴを「ビシャゴ」と呼ぶ地域もあります。
魚鷹(うおたか)という異名もあると言われていますが、中国語で、魚鷹(鱼鹰)(yu2 ying1/ユイン)はミサゴの通称のようです。
ミサゴの漢字表記・学名・英語名
【漢字表記】鶚、雎鳩、雎、鵃
【学名】Pandion haliaetus
【英語名(英名)】Western Osprey
タカ目ミサゴ科ミサゴ属ミサゴ
※日本産鳥類目録改訂第7版(日本鳥学会、2012)参照。
第6版(2000)では 英名は、Osprey、以前はタカ科に属していましたが、ミサゴ科になりました。
米軍の変翼式飛行機「オスプレイ」はミサゴが魚を捕獲する姿から名前が付けられています。
ミサゴの特徴
ミサゴの大きさや見た目の特徴、オスとメスの違いについて。
ミサゴの大きさ
【オス】体長55㎝、翼開長157㎝
【メス】体長63㎝、翼開長174㎝
オスのミサゴの体長は、日本でよく見られるハシブトガラスと同じくらいか少し大きいくらいのサイズですが、翼を広げた時の長さ、翼開長はミサゴの方が長いです。(ハシブトガラスは100㎝ほど)
メスのミサゴは、トビと同じくらいの大きさです。
ミサゴの見た目の特徴や色・模様
頭部と体の下面は黒い部分もありますが、ほぼ白色。
目から首にかけて太い暗褐色か黒に見える過眼線(眼から前後の方向に入る線、又は帯状の模様)があり、背中と翼の上面は暗褐色です。
首から胸にかけて首輪状の暗褐色の帯があります。
嘴(くちばし)は黒色。
ミサゴの最大の特徴は、後頭部にある白く短い冠羽です。
冠羽(かんう)とは、頭に生えている上方に跳ね上がった羽のことで、警戒している時などに猫が毛を逆立てるように冠羽を立てたりします。
羽毛は密生して水を通しにくくしており、足の色は青灰色で指はうろこ状になっていて、魚を捕まえた時の滑り止めになっています。
幼鳥の場合は、暗褐色である体の上面の各羽に白い縁があるのでうろこ模様に見えます。
ミサゴのオスメスの違い
ワシ・タカ類はオスよりもメスの方が大きいことが普通でミサゴの場合もメスの方が体が大きいです。
体色はオス、メスともにほぼ同色ですが、メスは胸の暗褐色の帯がオスよりも太く濃いです。
ミサゴの寿命
野鳥の寿命は、調査が難しいことから詳しいことは分かっていません。
また野鳥の場合は、幼鳥から成鳥になるまでを生き延びることが難しいと考えられているので、平均寿命を出すのも難しいようです。
標識(足環)を使って鳥類標識調査をしている研究所の調査では、体の小さな鳥は10年以上生きるのは少数ですが大型の鳥では海鳥類は長生きするものが多いことが分かっています。
山階鳥類研究所の標識調査による鳥の長寿記録では、アホウドリが34年4ヶ月、オオタカが18年8ヶ月、キジバトが8年3ヶ月、メジロが6年11ヶ月、ハシブトガラスが19年4ヶ月となっています。
ミサゴの生態
水辺にすむ猛禽類(もうきんるい)の一種と言われるミサゴの生態について。
※猛禽類は分類学上の括りではなく、猛禽類の禽(きん)は鳥を意味し、もともとの意味は「猛々しい鳥」で、獲物を捕らえるために体を進化させた鳥の仲間を言います。
ホバリングをする
ミサゴは魚を捕まえる時に、ヘリコプターの様に空中の一点に静止するホバリング飛行や急降下をすることができる鳥です。
かなりの上空でホバリングをした後に翼を九の字に折り曲げて勢いよく頭から水に向かって突っ込んでいきますが、水に飛び込む直前に翼を後方に上げて尾を広げ、足を前に突き出して魚を捕獲します。
また、ミサゴはそのようにして捕まえた魚の頭を前にして、足を前後にずらしてタオルを絞るように握って持ち運ぶという特徴を持っています。
魚を捕獲する際に大きな水音をさせるので、古来から「水辺の大きな鷹」として目立つ存在だったようです。
>>ホバリングをする鳥「カワセミ」の生息地や鳴き声についてはこちら♪
食性は肉食
食性は肉食性ですが、ミサゴの主食は魚です。
魚が捕れない場合はヘビなどの爬虫類、鳥類、貝類なども食べることがあるようですが滅多に見られない光景で、「魚しか食べない」と言われるほど魚を食べている姿ばかりが観測されています。
繁殖期
ミサゴの繁殖期のおおよその流れは、2~3月が求愛、造巣期、3~4月が抱卵期、4~6月が巣内~巣外育雛期となっています。
人が立ち寄らない断崖絶壁や突き出た岩場の上などに巣を作ることが多いですが湖や池で繁殖するミサゴは木の上に巣を作ることもあります。
2~3個の卵を産み、主にオスが狩りをしてメスが抱卵しますが、たまにオスが抱卵することもあるそうです。
2週間ほどで平均2羽の雛が生まれ、雛が大きくなってくるとオスだけではなくメスも狩りをして雛を育て、1ヶ月ほどで巣立ちを迎えます。
ミサゴの生息地・分布
ミサゴは極地を除いて全世界に分布していますが、数は減少しており、アメリカなどでは絶滅危惧種に指定され、日本でも地域によって変わりますが絶滅危惧種、準絶滅危惧種に指定されています。
魚を主食にしているミサゴにとって水面が穏やかなところは狩りがしやすい場所と言えます。
そのため港や堤防付近、海岸、ダム湖、広い河川、河口などに生息しています。
ミサゴは留鳥(りゅうちょう、とどめどり=渡りを行わず同じ場所に生息する鳥)ですが、日本国内では渡りを行うこともあります。
その際は夏に北海道などで過ごし、冬に暖かい西日本や南西諸島で過ごすものが多いようです。
ミサゴの鳴き声
↓こちらでミサゴが鳴いている姿を見ることができます。
↓こちらでは鳴き声だけを聞くことができます。
https://www.suntory.co.jp/eco/birds/encyclopedia/detail/1496.html
いかつい外見とは裏腹に「ピョッピョッピョッ」と優しく可愛らしい鳴き声です。
ミサゴは普段鳴き声を聞くことが少ない野鳥ですが、繁殖期などには鳴き声が聞けるようです。
鳴き声の種類・意味
鳥の鳴き声は大きく分けて「囀り(さえずり)」と「地鳴き(じなき)」があります。
鳥が鳴く理由の詳細は分かっていませんが、囀りは主に繁殖期などに求愛や縄張りを守るために鳴く声、それ以外の鳴き声が地鳴きとされています。
地鳴きは仲間同士の連絡手段であろうと考えられています。
ミサゴを保護した場合は!?
釣り針などで怪我をしたミサゴや、巣立ったばかりの幼いミサゴなどが飢えたりして倒れているのを保護されることがあります。
怪我をしていたり幼鳥であっても嘴や爪が鋭い猛禽類なので素人が保護をするのは危険です。
見つけた際は警察か県の環境保護課などに連絡しましょう。
野鳥であるミサゴは飼育は出来ません。
黙って飼育をしてしまうと鳥獣保護法違反となって逮捕されてしまいます。
まとめ
以下、ミサゴの特徴や生態・鳴き声についてのポイントです。
☑日本では留鳥だが国内間で渡りを行うこともある野鳥。
☑名前の由来は、魚を捕獲する際の姿や水音。
☑以前はタカ科に分類されていたが現在は、タカ目ミサゴ科ミサゴ属ミサゴ。
☑カラスと同じくらい、または一回り大きなサイズで翼は長い猛禽類。
☑ホバリングという飛行や急降下をして魚を捕獲する。
☑米軍の変翼式飛行機の「オスプレイ」はミサゴの英名。
☑魚を好んで食べるため水辺に生息している。
☑ほぼ全世界に分布しているものの、数は減少している。
☑怪我をした野鳥を保護する際には十分な注意と連絡が必要。
水辺で空をバックに飛んでいる姿を見て「トビ?ミサゴ?」となる方がいるようです。
腹の部分が褐色であればトビです。ミサゴの場合は褐色と白のコントラストが鮮明です。